新婚旅行で台湾を一周した。旅行社の手違いのおかげで、おもいがけず二人にリムジン・通訳付きの大名旅行となった。
台湾東海岸の花蓮では、通訳にお願いして現地の人々の集まるおいしい郷土料理店で、日本的な味付けでない料理を堪能した後、アミ族文化村の民俗舞踊を見に行った。舞踊見学の後、土産店をのぞくと、新しい土産物の他に古い土人形や木彫人形なども混じって売っている。二人で古いものを夢中で選び出して購入した。
ふと、店の横を見ると、倉庫の入り口が開いている。中を見ると古い家具などが積み上げてあり、一番下に大きな黒い碁石状の石がのぞいている。一部分しか見えないが、表に蛇や人面などの彫刻がある。上に乗っている家具を動かそうとしたが、山積みでとても無理だった。
「これ、台の上に乗せたらテーブルにならないかな?」と妻と意見が一致したので、早速交渉してみた。「10万円ならいい」とのこと。見えていない部分がちゃんとあるかどうか心配だったが、どうしても欲しくて、言い値で購入し船便で送ってもらうことにした。
一ヶ月ほどたって博多港から連絡があり、受け取りに行ったが一人ではとても持ち上げられないくらい重い。石盤の表全体に、図案化された蛇や人面や狩りの様子など、昔の生活をしのばせるありさまが浮き彫りにされており、ほぼ完品だった。
その後、懸命にテーブルの台にする木臼を探していたが、ようやく大分県の骨董店で入手でき、家に持ち帰り乾燥のため玄関脇に置いた。翌朝、臼を見ると何か小さいものがいっぱい動いている。近づいてよく見ると「あっ、シロアリだ!」あわてて焼却場に運び焼却してもらった。「急いでは事をし損じる」のことわざを思い出し、じっくり探すことにした。やがて知人の蔵にあった臼を譲ってもらうことができ、念願のテーブルが完成して座敷に鎮座した。
ところが、いざ使ってみると、彫刻のためテーブルの上に置いた物の安定がよくない。おまけに、間もなく娘が生まれ、つかまり立ちをするようになると顔をぶつけそうで心配になる。とうとう、テーブルは床の間に上げ、物置きの台となってしまい、ほこりをかぶっている。 |